前Future Funk史
前Future Funkの歴史
いまさら聞けない「フューチャーファンクに至る80年」/ フューチャーファンクはいかにして未来のファンクになったのか?|Dr.ファンクシッテルー
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今回は、この図で記した80年間の歴史を語っていきます。
フューチャーファンクの歴史については、ヴェイパーウェイヴから誕生したということはすぐ分かる
それだと「フューチャーファンクはファンクではなく、ハウスだ」という解釈で終わってしまう
フューチャーファンクは、本質的にはファンクミュージックです
確かに表面的には4つ打ちを基本とするハウス
フューチャーファンクは音楽史的にもしっかりとファンクの延長線上にあります。
しっかりとファンクが生み出した16ビート・ミュージックの系譜に入っているのです。
さまざまな文化を経ながら
ファンクとフューチャーファンクの間に、直接的な矢印の繋がりはない
1. ファンクが16ビートを生み出し
2. それがディスコになって
ダフトパンクのサウンドの影響を受けて、フューチャーファンクのサウンドが生まれた
ファンク/ディスコをサンプリングした
3. シティポップに入っていき
4. 最終的にフューチャーファンクがその16ビートをサンプリングしている
1940~1970 ファンク誕生まで
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アメリカの音楽史
ブラックミュージックがロックンロールに進化
シャッフルの誕生
シャッフルのリズムは、「8ビート」というリズムに進化
8ビートは、ソウルを経由しファンクで16ビートが誕生
1970~2000 シティポップとダフトパンクの誕生
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1970年代
ファンクがアメリカで大人気のジャンル
16ビートであることがダンスミュージックのヒットの一因として認識されるほどになっていきます。
ソウルもファンクの16ビートを取り入れ
ファンキーなソウルに馴染みのある方も多い
これらはファンクの影響で誕生したもの
スティービーワンダー、ジャクソン5などの
1970年代前半、日本
ニューミュージックが誕生
それまでの歌謡曲から
フォークソングやロックに影響を受けて
この段階ではまだ白人音楽からの影響が強い
ブラックミュージックからの影響を前面に押し出したアーティストは稀
1975年
ディスコミュージックが世界的なブームに
ファンクの16ビートを明るくポップにして、サウンドも泥臭い印象から、キラキラした都会的な印象へ変化させたもの
短く「ディスコ」とも呼ばれる
こうした流れを受けて
映画「Saturday Night Fever(1977)」は、空前の大ヒット
新たな社交場であったディスコと、そこで流れるディスコミュージックを描いた
ビルボードのアルバムチャートで24週連続1位という記録を樹立
ディスコミュージックの力を世界に見せつけました。
ポップミュージックの16ビート化
世界中のポップミュージックへの不可逆な影響
多くの国のポップミュージックが、ディスコの要素を取り入れて16ビート化
世界中のチャートでディスコが人気になったため
世界でも、16ビートであることがヒットソングの方程式に入ってきた
そしてもちろん、日本もその中のひとつだったのでした。
1970年代末から
シティポップの誕生
日本にもディスコブームがやってきたことで
ディスコのグルーヴやサウンドを取り入れたアーティストが日本からも多数登場
日本人からも山下達郎を始めとして、
ディスコの持つキラキラした都会的な印象と言うものをそのまま受け継ぎ
それだけでなく、16ビートのリズムを明確に取り入れていました
日本におけるファンクの歴史は、シティポップでスタートしたと言っても過言ではない
シティポップはドラマの主題歌やCMに積極的に使われ、歌番組でも人気を誇りました
主に日本で流行しただけ
この段階では世界的な評価は得られていませんでした。
ここで評価されなかったことが、後に重要になってくる
アメリカでは、ヒップホップが誕生
ファンクやディスコのレコードから
初期のヒップホップ
ファンクやディスコのレコードを使い
そのフレーズをそのまま演奏したり
レコードを2枚使って同じ箇所を繰り返し流しながら
ラップをする
1980年代
サンプリングという手法が生まれ、ヒップホップを通じて世界にそれが伝わっていく
レコードの音をそのままコピーして繰り返す
サンプラーが登場により
1993年
Daft Punk結成
誰も使っていなかったファンクやディスコのレコードから、新しい音楽を生み出した
この時、ダフトパンクが使ったファンクやディスコのレコードは世界的な評価を得ていない作品ばかり
フランスのクラブでは人気があった曲だったということ
2000~2020 フューチャーファンク誕生
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2000年代
過去の音楽や映像が、著作者でない人物によってアップロードされ続けるようになった
YouTubeなどの動画共有サイトの発展により、世界中の誰もが大量の素材にアクセスできる時代
こうした流れは、世界中で著作権を無視したコラージュ文化を生み出します
日本でもニコニコ動画などで、その文化が独自に盛り上がっていきました。
するとこういった状況でしか生まれ得ない、新たなアートを作り出そうとした人達が登場するのです。
作品性を追求する従来の音楽とは異なるアプローチとして、無価値な音源の継ぎ接ぎのみで無価値な音源を再制作する、という発想が生まれた(音楽のポップアート化)
2009年~2010年
チャック・パーソンが「Chuck Person's Eccojams Vol. 1」を発表
現在はワンオートリックス・ポイント・ネヴァー名義
これはTOTOの曲などをサンプリング、テンポを変えたりして使用している
コラージュ・ミュージック
例えばCDが飛んでしまったかのような無作為な繰り返し
あえてそれらの音源を本来の音楽的な意味から切り離していくような
Eccojamsというジャンル名で認識
完全にアート作品
商業音楽とは一線を画した内容
この手法は大量消費社会に対する皮肉も含まれており
この段階では、Eccojamsはファンクやハウスと一切関係なく、ダンスミュージックですらない
これで踊るのは至難の業
純粋な意味での「音楽的なサンプリング」ではないため
リズムキープはされているものの
翌2011年
同様の手法でマッキントッシュ・プラスが「Floral Shoppe」をリリース
現在はヴェクトロイド名義
手法としては同じコラージュ・ミュージック
かなり聞きやすい作品になっていました。
ダイアナ・ロスなどのR&Bや、スムース・ジャズなどがサンプリング
内容的にも本来のR&Bやスムース・ジャズのイメージを残したままコラージュ
まだ踊れる音楽ではない
テンポは遅く
まったりとしたスムース・ジャズの雰囲気に
時折Eccojams的な無作為なサンプリングが差し込まれている
このジャンルに新たに「ヴェイパーウェイヴ」という名前が付くことになる
ヴェクトロイドの「Floral Shoppe」がシーンに強いインパクトを与え多くのフォロワーを生み出した結果
根底には当時の文化へのノスタルジーがありました。
主に1980年代のレトロな音楽、映像をサンプリングして作られる
2013年
セイント・ペプシが、画期的なサンプリングを行います
Saint Pepsi
ヴェイパーウェイヴのアーティストとして活動していた
「Skylar Spence」
山下達郎の1982年の「LOVE TALKIN'(Honey It's You)」をサンプリングしたヴェイパーウェイヴ
そう、ここでサンプリングされたのは、
ついにサンプリングされたのは――
シティポップの16ビートだったのです。
ディスコを経て取り込まれた
ヴェイパーウェイブにしてはテンポが速く
しかもしっかりとしたダンスミュージック
踊れるファンキーな音楽になっていました。
2013~2015年
上記のようなヴェイパーウェイヴが多数登場
ファンキーなシティポップ
またはその源流となったディスコをサンプリングした
この音楽が、フューチャーファンクと呼ばれることになるのです。
1980年代のノスタルジーに裏打ちされた
世界でも類を見ない、日本のシティポップを積極的にサンプリングし続ける新しい音楽
https://ameblo.jp/chocolat-et-framboise/entry-12408517068.html
Future Funkはvaporwaveとはかなり違ってきています。どちらもスタイルとしてインターネットカルチャーに関連はしていますが。イメージやサウンドはまったく違います。音楽的には、vaporwaveはFuture Funkの真逆です。低いトーンでスローな曲、すべてがとてもゆっくりです。
Future Funkはきびきびしていて速い、真夜中に120kmで走っているオープンカーが巻き起こす風みたいな。
(筆者注:フューチャーファンクの重要アーティスト、「悲しい Android - Apartment¶」のインタビュー)
フューチャーファンクはテンポも速く、しっかりと踊れるポップなダンスミュージックに
ヴェイパーウェイヴと違い
具体的に言うと、ダフトパンクによく似た、ファンキーなハウスの4つ打ちが基本のリズムになっていた
それだけでなく、サウンドもダフトパンクの「フィルターハウス」が基本になっていました。
これはフューチャーファンクのアーティストの多くが、ダフトパンクのフォロワーだったことが理由となっています
https://block.fm/news/nighttempo_interview
(筆者注:フューチャーファンクの重要アーティスト、Night Tempoのインタビュー)
僕は様々な昭和歌謡を聴いてきたこともあって、原曲の良さも理解しているつもりだったし、Daft Punkも角松敏生も好きだったので「もし、Daft Punkがその時代に角松敏生などシティ・ポップのミュージシャンたちと一緒に曲を作ったとしたら?」ということを考えた結果、自分でフューチャーファンクを作り始めることになりました。
https://spincoaster.com/interview-macross-82-99
(筆者注:同じく重要アーティスト、マクロスMACROSS 82-99のインタビュー)
DTMを始めた当初はサンプルをベースとしたディスコ、ハウス(筆者注:これはダフトパンク・サウンドのこと)のプロデューサーになりたかった。そしてその後Vaporwaveにガツンとやられた。その2つの要素を足してみた結果がFuture Funk[という今の音楽スタイルに結実したんだ。
まとめ
1. アメリカで生まれたファンクの16ビート
2. 16ビートがディスコに入って世界中に拡散
3-1. 日本のシティポップ
3-2. フランスのダフトパンク
4. フューチャーファンクで一つに
フューチャーファンクはヴェイパーウェイヴの派生形としてじわじわと人気に
2016年、爆発的に知名度が上がった
Night Tempoの「Plastic Love (Night Tempo 100% Pure Remastered)」が大ヒットしたことで
この動画を経て、現在のシティポップブームへと繋がっていく
サンプリング元となった竹内まりやのシティポップ、「Plastic Love(1984)」が世界的に注目され
それに伴って、フューチャーファンクのアーティストも急増
アニメのサンプリングなど、新しい手法も取り入れながら進化を続ける
https://www.herenow.city/seoul/article/night-tempo/
ーNight Tempoの音楽は「Future Funk」というジャンルにカテゴライズされますが、本人はどのように認識されていますか?
Night Tempo:Future Funkには、3つの世代があると思っています。第1世代はVaporwaveに近くて、サンプリングを駆使するイメージ。第2世代はポップでダンサブルな感じ。Daftpunkみたいな音といえばいいでしょうか。
第3世代はオタクカルチャーからの影響が大きくて、アニメのセリフや楽曲をサンプリングしたり。私は第1世代と第2世代の中間の1.5世代くらいかな? と思っています。
新しいフューチャーファンクの解釈が生まれる
こういったアニメの声のサンプリングなどがフューチャーファンクに入ってきたことで
アニメソングやゲームミュージックといったジャンルに寄せるフューチャーファンク、という解釈です。
シティポップの本来の影響元であるファンク/ディスコのファンキーな16ビートを意識せず
ですが、フューチャーファンクの本流としては、
やはりファンキーなシティポップを意識したサウンドが続いています。
そしてその影響元となったファンク/ディスコ
「辿り着けない未来」のファンク
世界的に評価されていない楽曲のサンプリング、という非常によく似た現象
ダフトパンクは「ファンキーなディスコ/ファンクのレコード」
フューチャーファンクは「ファンキーな日本のシティポップ」
例えばダフトパンクがシティポップの熱心なフォロワーであったなら、彼らが杏里の「Remember Summer Days」をサンプリングする可能性だってあったのかもしれません。
この世界では、ダフトパンクはシティポップをサンプリングせずに解散しています。
並行世界、別の世界線では、あるいはそんな未来もあったのかもしれませんが
フューチャーファンクは、「辿り着けない未来」に位置している音楽
「もしダフトパンクが、シティポップでサンプリングしていたら」
Night Tempoが語っていたように
https://kompass.cinra.net/article/202202-nighttempo
―フューチャーファンクという言葉はどこからきたのですか。
Night Tempo:これは適当です。コミック作品『AKIRA』の未来的なイメージから浮かんだ「フューチャー」というワードに、ぼくにとっての達郎さんのイメージである「ファンク」を合わせた造語です。外国人が思うかっこいい言葉を適当につけて、仲間内で使っていたら定着していきました。
Night Tempoはフューチャーファンクの命名者の一人
やはりこの命名は、とても示唆に富んだものだったと考えられます。
彼はその命名を「適当」だと語っていますが
山下達郎が「ファンク」だというのも、シティポップの影響元であるファンク/ディスコの姿をしっかりと捉えていないと生まれてこないアイデアですし
それがSF的な「辿り着けない未来」であることを示しています。
さらにフューチャーファンクの「フューチャー」が「AKIRAの未来的なイメージ」であることも